ひょうたん島苫屋(とまや)さんは、大槌産の燻製を香りとともに全国へお届けしている専門店。東京からやってきたご主人がおいしさに惚れ込んだ三陸の魚介類と、地元の木材を使い分けたこだわりの煙で仕上げる燻製は、新たな名物として注目を集めています。
今回は鮮魚や水産加工品を手掛ける事業者さんを対象とした「生産者」ページの取材で伺ってきました!
ひょうたん島苫屋さんのお店は、大槌町浪板の海を見下ろす国道45号線沿いにあります。
海からの波が引かずに寄せ続ける「片寄波」の浪板海岸は、東北有数のサーフスポット。サーファーの聖地とも呼ばれ、町民の中には浪板で“朝サーフィン”を楽しんでから出勤する強者も居るのだとか。白砂清松の美しい海岸でしたが、東日本大震災で砂浜と松林の大部分が流失。砂浜再生工事を経てかつての面影を取り戻し、2022(令和4)年には11年ぶりに海開きを迎えました。植えられた松の苗木は今も懸命に成長し続けています。
お店の中に入ると、さっそく燻製の良い香りが…。
思わず深呼吸していると、代表取締役社長の新谷洋一さんが奥から出てきてくれました。
新谷さんは東京大学の大学院を修了した工学博士。アメリカの大学や研究所などへ勤務し、東日本大震災の支援のため2013(平成25)年に大槌町にやってきたのだそうです。
お店や加工場を案内してもらいながら、私はずっと気になっていたことを質問してみました。
「苫屋、というお店の名前…。私は“われは海の子”の歌詞が浮かぶのですが…」
すると新谷さんは「よく気付いたねぇ!」と眼鏡の奥の瞳を輝かせ、大きくうなずいてくれました。
“われは海の子”は、大槌町では朝6時の防災無線でひっそり響くお馴染みの曲です。
我は海の子 白浪の
さわぐいそべの松原に
煙たなびくとまやこそ
我がなつかしき住家なれ
漁師さんが作業する掘っ立て小屋という意味を持つ、とまや=苫屋。
新谷さんは「大槌町とともにゼロからスタートしよう」という思いを込めたのだそうです。
そして、そこからたなびく煙…。まさにひょうたん島苫屋さんを思い起こさせる光景。
復興の狼煙はかぐわしい燻製の煙となり、全国各地に大槌のおいしい魅力を運び続けています。
新谷さんは自慢の燻製を手に物産展などのイベントに数多く出店しており、いつも大忙し。
一番の人気商品は、思いとこだわりがつまったおいしさを堪能できる「苫屋の燻製アラカルト」だそうです。
異なるチップや燻煙時間の違いで多彩な味わいが楽しめるほか、魚介類の組み合わせが変わることもあり、シェフの気まぐれならぬ“苫屋さんのおまかせ”的な楽しさも人気を呼んでいます。
もしかして、あなたの町にもひょうたん島苫屋さんがやってくるかも…?
新谷さんは「何よりお酒が大好き!」とのことなので、お酒のアテにぴったりの燻製やおいしい食べ方も教えてくれるはず…!
見かけた際にはぜひ立ち寄って、新谷さんとのお話も楽しんでみてください。
ひょうたん島苫屋さん、お忙しい中ありがとうございました!
今回の取材をもとに作成したひょうたん島苫屋さんの「生産者」ページはこちら。