ひょうたん島苫屋

三陸の新鮮な魚介類と、
燻製の専門店が作り出す香り高い味

ひょうたん島苫屋さんは大槌町浪板の海を見下ろす燻製屋さん。東京からやってきたご主人が手掛ける燻製は、美味しさに惚れ込んだ三陸の魚介類と、地元産の木材を使い分けたこだわりの煙で作り上げます。ぎゅっと香り立つ唯一無二のうま味はまさに、大槌町の新しい魅力となる味。全国各地のイベントに出店しファンを増やし続けています。

9商品
ひょうたん島苫屋の燻製アラカルト

大槌町の復興とともに歩んできたおいしさを、香りとともに全国へ

漁師さんが作業する掘っ立て小屋という意味を持つ「苫屋」という名前にご主人が込めたのは、大槌町とともにゼロからスタートしようという思い。移住者ならではの目線を大切にしているからこそ伝えられる三陸のおいしさと、燻製の煙に詰まったこだわりを伺いました。

ひょうたん島苫屋 新谷洋一さん

始まりは、被災地に特産品と生業を生む支援から

2014(平成26)年に設立したひょうたん島苫屋さんは、三陸の魚介類とチップを使ったこだわりの燻製を手掛ける専門店です。
代表取締役社長の新谷洋一さんは東京都出身で、東京大学の大学院を修了した工学博士。アメリカの大学や研究所などに勤務していましたが、2011(平成23)年の東日本大震災を経て、被災地の支援のため2013(平成25)年に大槌町にやってきました。被災地の水産物を活かした特産品を開発し地域のシニア世代に生業や生きがいを作ろうと取り組む中で思いついたのが、地元の魚介類と木材を活用した燻製づくりでした。

お酒が大好きな新谷さんは「おいしいつまみが作れたら、自分も楽しいかな」と、最初こそ軽い気持ちだったそうですが、工学博士の技術を活かし、なんとオリジナルの燻製装置を作るための設計と煙を出す実験からスタート。サケ、ホタテ、カキとどんどん種類を増やしていきました。

現在は地元のスタッフさんと3人で、日々商品を手作り。研究し尽くされた煙と、新谷さんの経験による絶妙な“あんばい”で生み出された燻製は、首都圏で話題を呼び、今では町内でもお馴染みの商品です。

蠣燻製オイル漬の入ったオードブルプレート

新鮮な食材を引き立てる煙と、自分自身の目と舌で生むおいしさ

ひょうたん島苫屋さんの燻製に欠かせないのが、新鮮な三陸の魚介類。地元の漁協や鮮魚店、時には漁師さんから直接仕入れ、手早く下ごしらえを行います。お刺身でも食べられる鮮度の食材を、20度以下の低い温度で燻製する「冷燻」という手法で仕上げ、凝縮されたうま味と食感に、こだわりの香りをまとわせます。

使用する地元産の燻製用チップは、リンゴ、サクラ、ナラの3種類。養殖サーモンにはまろやかな煙を出すリンゴの木と、ツンとした煙が特徴のサクラの木のチップを使い分け、カキやホタテなどの貝類には色づきが良いナラの木のチップを使用しています。
「リンゴのチップは、ワインやシャンパンなどの繊細なお酒に合う上品な味になります。サクラのチップはパンチがあり、塩分が強めの味付けをした食材の燻製にぴったりなので、辛口の日本酒で一杯いきたい仕上がりになりますね」と、お酒好きならではの説明を交える新谷さん。
「燻製の最終的な仕上がりを決めるのは、自身の目と舌。食材の状態やその日の天気に合わせて変化しますし、目安はあっても数値はない。これがおもしろいところです」と、嬉しそうに笑います。

新谷さんのこだわりが光る「苫屋の燻製アラカルト6個入」は、ひょうたん島苫屋さんの燻製を心行くまで堪能できるとあって、多彩な商品の中でも一番の人気。季節によってラインナップが変わることも魅力でリピーターも多く、全国各地から「おいしかったよ」の声が届いているそうです。

地元産の燻製用チップ
燻製用のチップも地元産の木材で調達する徹底ぶり
ふぐの切り身を乾燥させる
試作を重ねベストな状態を見極め。熟練の製造のひとつ一つが手造り
ただいま燻製中
リンゴ、サクラ、ナラ...素材に合わせてチップを使い分け

宝物のような三陸の魚介類の魅力を商品に込め、発信し続けたい

手から手への販売も大事にしているというひょうたん島苫屋さん。大槌町を飛び出して、全国の催事にも数多く足を運んでいます。商品に惚れ込んだ現地のお客さんが宣伝を買って出てくれるなど、着々とファンを増やしてきました。

新谷さんが特に印象深かったのは、2024(令和6)年の3月に初めて「ふぐの燻製」を販売したときのこと。海水温の上昇などによりカキやホタテといった食材が年々手に入りにくくなっている中で、漁獲量が増えても利用が難しかったフグを活用し、地元の事業者さんとの連携で生まれた商品です。さっそく県外のイベントで販売すると、思わぬ大きな反応がありました。新谷さんは当時を振り返り「商品を味見した人たちの目が、みるみるうちに輝いたんです。次の瞬間、この商品を2個ください、3個くださいって売れ始めた。ああ、これはおいしさにハマってくれたなって」と、確かな手ごたえを噛み締めます。

「大槌への移住者である私だからこそ、外部の視点を大切にしています。大槌町や三陸の海と山がもたらす恵みは、かけがえのない宝物。大切に活かし、魅力をPRしていくためにも、町外・県外の人たちにも魅力を感じてもらえる商品をこれからも作り続けていきたいです」と、新谷さんは熱い思いと未来への希望を話してくれました。

ひょうたん島苫屋

Hyotanjima-Tomaya

苫屋さんのお店には、燻製の良い香りが満ちています。新谷さんが設計したオリジナルの燻製装置を見せていただくと、そこには深い色合いの木製の扉が。もともとは白っぽい木材で、繰り返し燻製を作る中でだんだんと染まっていったのだとか。新谷さんが大槌町で過ごしてきた日々を色濃く映し、お店の片隅から煙とともに人生が香るようです。

株式会社ひょうたん島苫屋
〒028-1101 岩手県上閉伊郡上閉伊郡大槌町吉里吉里第11地割64番地6
TEL 0193-44-3009
9商品