越田鮮魚店

地元の魚、地元での加工にこだわった
先代の思い伝えるおいしさ

大槌町安渡の魚市場の近くにお店を構える越田鮮魚店さんは、家族で営む地域のお魚屋さん。漁師だった先代から受け継ぐのは、新鮮な三陸の魚介類へのこだわりと、地元で加工するからこそ生み出せる味。ご支援に感謝し、人との繋がりを大切にし続ける家族の絆と人柄も、全国のファンに愛されています。

1商品
越田鮮魚店の特選セット

お得意様が惚れ込み、ご新規さんの心を掴む“越田さん”の味

越田鮮魚店さんの手掛ける商品はどれも、越田さんが思う大槌らしさを込めたシンプルながら味わい深いおいしさ。
懐かしいふるさとの味として買い求める人はもちろん、越田さんの味に心をがっちり掴まれたリピーターも多く、今日も全国と大槌町を繋ぎ続けています。
その背景にある、先代とご家族が共に歩んできた日々と、未来への思いを伺いました。

味付けスルメ

「おいしいお魚が食べたい」という声に応え続けて

越田鮮魚店さんが創業したのは1983(昭和58)年。当時、お隣・釜石市は新日本製鐵株式会社(現:日本製鉄株式会社)とともに栄え、大槌町はベッドタウンとして人口が増加。整備された新興住宅地のスーパーに魚を卸すことになったのがきっかけでした。
先代の越田竜二さんは、マグロ船やサケ・マス漁に携わった元漁師。確かな目で仕入れる大槌産の新鮮な魚介類と、奥様の昭江さんの絶妙な味付けが評判を呼びました。

しかし、2011(平成23)年の東日本大震災で、海沿いの新港町にあった店舗と自宅が全壊。山間部に空き家となっていた古民家を見つけ、一家で身を寄せました。日々の食事のため簡単な干物などを作り始めると、近隣の人やお得意様から「お魚を売ってくれないか」との声が。山の中の魚屋さんとして話題となり、再開を望む声は大きくなっていきました。竜二さんと昭江さんはお店を畳むことも考えていましたが、程なくして仮設店舗建設の話が舞い込みます。
「ここまで来たら、もう一回やってみっか」と決意し、震災の年の秋には仮設店舗から全国へサンマを発送。これを機に、息子の俊喜さん・弥美さん夫婦が本格的に加わり、越田鮮魚店さんは一家で営む魚屋さんとなりました。

2018(平成30)年には、安渡の魚市場の近くに店舗を再建。しかし、再スタートを切って間もない2021(令和3)年、家族とお店の大黒柱だった竜二さんがご逝去されました。全国からの応援を支えに俊喜さんが2代目として跡を継ぎ、現在もお店を切り盛りしています。
幼い頃から竜二さんの仕入れに付いて行き、魚の仕込みを手伝っていた俊喜さん。高校までを大槌で過ごし、東京で設備工事の仕事に就いていましたが、ご両親を気づかって2000(平成12)年頃に大槌町へUターン。東日本大震災の直後まで会社員として働いていました。
「家を継ぐことを具体的に考えていたわけではなかった。ここまで来られたのは、家族の存在と、皆さんの応援のおかげです」と、感謝の気持ちを噛み締めています。

越田鮮魚店 店主の越田俊喜さん

大槌の風土とともに、手塩にかけて引き出すうま味

越田鮮魚店さんが大事にしているのは、大槌らしい味付け。俊喜さんいわく「極力余計なものを入れず、シンプルでガツンとくる素材のうま味」こそ、地域の人たちに愛され、全国に根強いファンを持つ味です。
それを引き出すには、まずは新鮮さが欠かせません。早朝、俊喜さんが父直伝の目利きで仕入れた旬の魚介類を、昭江さんと弥美さんも加わって手早く捌いて加工します。
味の決め手となるのはやはり、昭江さんの職人技。創業当時からの名物である魚の干物は、作り方がシンプルだからこそ、特にその技が光ります。
昭江さんは「地元で獲れた新鮮な魚と、大槌の浜風とお日さま。この三つが揃ってこそうちの味になる。舌だけじゃなく目と指も大事だよ。そうやって、父さん(竜二さん)と息子夫婦と、長ぁくやってきました」と、目を細めながら話してくれました。

天日干しの最中は天候だけでなく、魚の種類や油乗りに合わせて気温や湿度などにも気を配ります。小まめに様子を見て、外に出したり引っ込めたり…時には日に何度も繰り返しながら、最終的な仕上がりを調整していくそうです。
「ひとつひとつ、まさに手塩にかけているからこその、ギュッと詰まったうま味を感じてもらいたい。お好みで醤油をタツっと(ポタっと)垂らしてみたり、ご飯のおかずはもちろん、お酒のアテにも。すすみますよ」と、笑顔の俊喜さん。
ふっくらした身がジューシーな「塩サバ一夜干し」と、甘じょっぱい味付けが食欲をそそる「いわし味醂干し」は、中でも人気の商品。「味付けスルメ」は煮物などにもアレンジでき、遠方から買い求めるファンも多いそうです。

越田鮮魚店の煮たこ
三陸・前浜の魚の特性を熟知しているからこそのおいしさ
カレイの干もの
潮風の当たる店頭で天日干しする干ものは、焼き上げると食欲をそそる香り
石山水産さんの三陸生しらす
地元定番の料理こそ越田さんの味が際立つ、わかめの茎漬

先代から受け継ぐ味と思いを、皆さんのもとへ届けたい

俊喜さんが子どもだった頃。冬になると越田鮮魚店さんの敷地には、大槌発祥とされる「新巻鮭」が所狭しと吊るされ、冷たい浜風に揺れていました。しかし近年、海水温の上昇などによりサケが不漁に。そればかりか、サケに次ぐ主力商品だったイカやウニも漁獲量が減少しています。
「震災で大槌を離れた人も、越田さんの新巻やウニが楽しみだって毎年電話をくれるんだ。遠方からわざわざ訪ねてくれる人も居てね。食べてもらいたいのに品物の数がなくて、本当に申し訳ない」と、肩を落とす昭江さん。
それでも大槌や三陸の魚介類にこだわった商品を作り続けるのは、地元で獲れたものを地元で加工するからこそのおいしさを知っているから。安定して水揚げがある魚を活かし、海流の変化とともに新たに水揚げされるようになった南方の魚たちにも目を向けながら、越田鮮魚店さんは先代から受け継いだ味と思いを繋いでいます。

「まだ手探りですが、数が獲れない魚を組み合わせたものを、飲食店に卸す仕事にもチャレンジしています。せっかく大槌の港に揚がった魚なので、海の恵みを無駄にせず、一匹でも多くお客さんのもとへ届けたい。これからもたくさんの人に、大槌のおいしい魚を食べてもらいたいです」と、俊喜さんは思いを込めました。

越田鮮魚店

Koshita Sengyo Ten

取材中も「塩辛あります?」とお客さんが。越田さんの味が病みつきになってしまった人がまた一人…。お会計を終えると、昭江さんが外までお見送り。「ほら、あんたのいい顔を見るためにトンビが飛んで来たよ」と空を見上げる昭江さん。人との繋がりを大事にする越田さんご家族との会話にも、唯一無二のうま味があります。

越田鮮魚店
〒028-1105 岩手県上閉伊郡大槌町安渡3丁目13-522
TEL 0193-42-5363
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