先々代からの長い歴史を持つTRS食品さんは、TRY SANRIKU(トライ三陸)を社名に掲げ、大槌や三陸、社会の状況に合わせて様々な事業や企画に挑戦し続けて来た会社です。当時の技術を受け継ぎながら、全国のお客様に目を向けた商品開発に取り組む背景にある、未来への思いを伺いました。
いつの時代も変わらない、大槌の潮風を原点に
潮風堂の名は原点とする大槌の浜の潮風を忘れないという思いと、三陸の気候と風土を活かした商品づくりに取り組んでいくという本社・TRS食品さんの決意がめられています。
その始まりは、昭和初期に漁師さんを始めた先々代。やがて、製氷冷凍工場や水産加工にも携わり、昭和50年代中頃に現代まで続くイクラの加工販売をスタートさせました。
1999(平成11)年に創業し、地産地消のニーズから干物の加工販売を始めた矢先、2011(平成23)年の東日本大震災で大槌町の港の近くにあった本社が全壊。辛うじて全壊は免れた吉里吉里の加工場を修繕し、その年の11月には再開に漕ぎつけ、翌年には独自ブランド「潮風堂」の商品を作り始めました。
2017(平成29)年、防潮堤工事のため吉里吉里の加工場が取り壊され、現在事務所と加工場を置く両石へ。2019(平成31)年には本社も両石に移転しました。
自社ブランド・潮風堂の名前は、港町に本社を構えていた時代に作っていた干物「潮風干し」から着想。原点とする大槌の浜の潮風を忘れないという思いと、三陸の気候と風土を活かした商品づくりに取り組んでいくという決意がめられています。
代々つたわる秘伝の技術で手掛けるイクラと、新たな名物
潮風堂さんの看板商品は、何といってもイクラ。1970(昭和45)年代、大槌町でサケの漁獲量が増えてきたことから、北海道からのイクラの加工を手掛ける職人さんを呼びよせ、一緒に働きながら製造のノウハウを学んでいったことが始まりです。時代とともに変化と工夫を重ねながら、当時学んだ技術を基にした手法で、現在も製造を続けています。
サケのお腹を手作業で開いてイクラを取り出し、人の目と指できれいに洗い上げます。色、つや、大きさ、柔らかさなどにより等級別に分けられ加工されますが、これらの技術は門外不出の職人技として社内で代々受け継がれているそうです。
営業部長の田中茂さんは「国産かつ最高級の3特イクラは、築地でも人気の商品。粒がしっかりしているのに口の中でとろけるおいしさだと、感動の声が寄せられています」と誇らしげに話します。
そんなお客様の声を大事にする潮風堂さんの自信作が「三陸地物焼き」シリーズ。独自の製法で骨まで食べられるよう調理した焼き魚です。湯銭またはパウチから取り出して電子レンジ調理ができるように作った背景には、県外のイベントに出展した際に寄せられた、お魚が焼けないという声がありました。
当時を振り返り「まさに目から鱗でした。マンション住まいで匂いが気になる人や、調理器具が持っていない人、高齢で火を使うのが怖いという人など、事情も様々。ならば、そういう皆さんにこそ食べてもらえる商品を作ろうと考えました」と話す田中さん。
サンマ、サケ、ブリの3種のお魚を、塩やみりんなどの味付けで焼いたほか、岩手産のワインの風味を効かせた「山ぶどう漬焼き」も評判です。
先代たちの歴史を礎に、海とともに歩み続ける
「かつては船の修理も担うなど、漁業と魚に関するオールマイティーな会社だった」と振り返る田中さん。
近年、海水温の上昇などで獲れる魚が変わってきており、サケやイクラを仕入れが思うようにいかないことも増えてきたそうです。
「この局面をどう乗り切っていくか…。先代や先々代の時のように、得意分野を活かしてできる新たな取り組みを模索することも必要です。ゆるくないけど(大変だけど)、頑張らねぇば!」と、世情に柔軟に対応しながら歩んできた会社の歴史を改めて胸に刻みました。
潮風堂/TRS食品
Shiokaze Do / TRS Shokuhin
「潮風堂」ブランドを手掛けるTRS食品さんの屋号は、田中さんが高校生の頃から、丸印の中に吉で“まるきち”。大槌町吉里吉里の吉なのだとか。もともと加工場があり、震災直後には全壊した本社に変わる拠点となるなど、TRSさんとの繋がりも深い吉里吉里。いつも心の真ん中に吉がある…。なんだかとても素敵なマークなのです。
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