何気ない日常の中でマストに立ち寄れば、ほぼ必ず目に入るのが魚よしさんの店頭。
色とりどりの旬の魚やお刺身などがずらっと並ぶ光景もまた、新鮮さにこだわる魚よしさんが先代の教えとともに日々丁寧に作り上げたもの。
背景にある、地域の魚屋さんとして担ってきた役割や思いを伺いました。
あの日も地域を支え続けた“マストのお魚屋さん”
魚よしさんの始まりは、1967(昭和42)年に、先代である平野昭右エ門さんが大槌町の町方地区で始めた小さな鮮魚店でした。1993(平成5)年にはショッピングセンター・シーサイドタウンマストのオープンに合わせてテナントに入り、1998(平成10)年に会社として創業。60年近くも大槌町で親しまれてきた地域のお魚屋さんです。
しかし、2011(平成23)年の東日本大震災でマストとともに全壊し、数か月の休業を余儀なくされました。市場も被災し魚の仕入れが困難な日が続く中、昭右エ門さんは移動販売のトラックを購入し、食品や日用品も詰め込んで避難所や仮設住宅を回りました。
半年後にマストの再オープンが決まり、また一からスタートをと思っていた矢先、昭右エ門さんがご逝去されました。2002(平成14)年から一緒に働いていた息子の将さんは、「とにかく黙っていられない人で、一日中、魚とお店のことばかり考えていた」と昭右エ門さんのお人柄を振り返ります。
将さんが2代目としてお店と先代の遺志を継ぎ、お店を再開。現在は弟の剛さんとお母様の佳子さん、地元のスタッフである小岩さんの4人で、大槌町の台所を支え続けています。
新鮮さとおいしさを守る基本は、先代からの教え
魚よしさんの店頭には、新鮮なお魚やお刺身を数多く並びます。日々地域の方に買ってもらうだけでなく、三陸の新鮮な魚介類を大槌から全国へ発送する役割も担います。生きたまま自宅に届く毛ガニやホタテは、多くの人を驚かせ、その新鮮な美味しさは一度食べたら忘れられない味。お歳暮などの贈り物として買い求めるお客さんも多く、町外から新鮮でおいしいお魚を求めて「大槌町に来たら必ず魚よしさんに立ち寄る」というファンも多いそうです。
2代目の将さんは「市場に揚がったそのままに近い新鮮さで、お客さんに食べてもらいたい。特に氷をたくさん使ってしっかり冷やすことは、先代である父から一番最初に教わったこと。今もこれからも変わらない、新鮮さの基本です」と話します。
毎朝の仕入れは弟の剛さんと二手に分かれて向かい、毎日豊富な魚種を取り揃えています。
父が愛したお店と大槌の魚を、兄弟で受け継いで
2代目の将さんと弟の剛さんが、兄弟でお店を切り盛りするようになって15年ほど。「これからも父から教えられてきた丁寧な仕事を大切に守り、兄弟で協力してお店を続けていけたら」と話す剛さん。
その様子を見守るのは、お母様の佳子さん。主に接客を担当し、佳子さんとお話を楽しみに訪れる人も少なくありません。
「長年支えてくださるお得意様や、全国の皆さんに感謝、感謝です。息子たちとできるだけ長く、こうして一緒に働いていけるよう、これからも元気でいなくちゃね」と、笑顔で話します。
魚よし
Uoyoshi
大槌町も例にもれず高齢化が進み、シーサイドタウンマストにも多くのお年寄りが訪れます。地元スタッフの小岩さんは「買った商品を、車まで持っていくのを手伝ってけで〜と言われることも多い。これからも皆さんに寄り添っていけたら」と話します。お得意様が愛す、魚よしさんの丁寧なお仕事の一つです。
- 魚よし
- 〒028-1121 岩手県上閉伊郡大槌町小鎚第27地割3-4
シーサイドタウンマスト内 - TEL 0193-42-8178